⑨「心臓疾患」の障害年金のポイント
「心臓疾患」の障害年金のポイントについて説明をしていきます。
(1)(はじめに)
以下の4つの点から説明をしていきます。
① 初めに確認すること
②「初診日の証明」について
③ 診断書の取得にあたって
④「病歴・就労状況等申立書」について
(2)①初めに確認すること
心臓疾患で障害年金の申請を行う場合、まず確認する必要があるのは、「検査の結果」です。
というのも、障害年金の審査基準である「障害認定基準」の中に、障害年金の支給対象となる場合の「各項目の検査結果の数値」が予め明確に定められているからです。
そのため、診断書の取得などの申請を進める前に、直近の検査の結果等をよく確認することが大前提となります。
そして、「障害認定基準」と「直近の検査結果等の値」を比較・照合してみることになります。
もし、自分で判断がつかないときや少しでも疑問がある場合は、医師に「障害認定基準」の該当箇所を見せて、受給可能性について相談をすべきです。
(3)②「初診日の証明」について
心臓疾患の場合、「いつを初診日とするか」について、困難なケースが少なくありません。例えば、前段階の症状との因果関係が問題となることがあるからです。
そのような場合(いつを初診日とするか判然としない場合)のアプローチの方法は、年金事務所に相談に行く前に、「初診日」との関連が想定される複数の医療機関で、障害年金の初診日の証明書である「受診状況等証明書」を実際に取得します。
そして、取得した「受診状況等証明書」の内容を比較・検討していきます。
具体的には、「どこを初診日とするのが、一連の流れの中で最も合理的であり、かつ申請上のリスクが少ないのか。」という観点に立って、比較・検討を繰り返し、「初診日の特定」を行うこととなります。
※この場合に注意すべきは、取得した初診日に関する証明書について、そのすべてを障害年金申請書類として提出するわけではないということです。あくまで、手許資料として活用し、初診日の証明に必要な範囲で、障害年金の申請に添付していくことが基本となります。
(4)③診断書の取得にあたって
診断書の取得にあたって注意すべきポイントを、診断書の取得前と後に分けて説明します。
〔診断書の取得前〕
心臓疾患の診断書には、「日常生活の状況」などに関する内容も記載項目に入っており、審査の対象となるので、診断書を取得する前に事前に主治医にそれらの状況等を伝えておくことが大切です。
それらの内容を十分に伝えていなかったために、本来は、より上位の等級(例えば2級)を受給できたはずなのに、下位の等級(3級)に認定されてしまうこともあります。
医師に伝える際には、漠然と内容を伝えるのではなく、日常生活の状況について、食事、清潔保持(洗面・入浴)、外出、買い物、通院などの各項目ごとに詳細な内容を伝える必要があります。
具体的には、「何について」制限や支障があるのか(例えば、外出や移動)、明確にすることです。その際には、数値化(〇キロメートル、〇時間など)できるものについては、数字を用いて伝える方がより良いと思います。また、「自覚症状」についても、主治医に細かく伝えておく必要があります。
そして、伝える方法についても、医師に伝える内容が多岐に渡り、また正確に伝えることが不可欠であるため、内容をわかりやすい形で文書化した「診断書作成依頼書」を準備して医師に渡すこととなります。
〔診断書の取得後〕
心臓疾患の障害年金の診断書では、診断書の記載事項の記載もれや不備がよく目につきます。
こうした診断書の記載もれや不備は、障害年金の審査の上で、「不利益な扱い」を受けることにつながります。
すなわち、診断書に記載されていないということは、とりも直さず「その部分については障害はない。」として扱われることにもなるからです。
また、場合によっては、いったん障害年金の申請をしても、診断書の不備を理由として、申請書類が差し戻されてしまうことがあるからです。
こうした診断書の形式的な不備だけでなく、診断書に書かれている症状などの程度についてもよく見直しをしなくてはなりません。
実際にも、診断書に記載された、「症状や障害の程度」が、実際の程度よりも軽く記載されていたり、不正確な記載がなされることがありうるのは、経験上からも明らかと言えます。
取得した診断書の内容を慎重に検討し、自覚症状・日常生活の状況などについて、もし、記載もれや障害の状態とことなる箇所があれば、正確な内容とするよう、訂正の依頼を行うことになります。
その際には、診断書の依頼時と同様、依頼する内容をわかりやすく文書にまとめ、また口頭でも医師によく説明をすることが必要です。
(5)④「病歴・就労状況等申立書」について
最後は、「病歴・就労状況等申立書」についてです。
「病歴・就労状況等申立書」は、以下の事柄が大切です。
①まず診断書を何回も読み直し、診断書の記載内容をよく頭に入れ、診断書の内容と矛盾しないように、「病歴・就労状況等申立書」の作成を行うことが基本です。
その上で、「診断書の内容とリンクさせる。」という視点を持つことも大切です。
例えば、診断書の記載内容が簡潔な記載に留まっていたり、一見するとよく内容がわからない記載が診断書にある場合を取り上げてみます。
このような場合、診断書の記載内容に照準をあて、自ら作成する「病歴・就労状況等申立書」の中で、診断書の記載内容について、自分の言葉で補足を加えたり、わかりやすく説明をしていくのです。
その反射(結果)として、診断書の記載内容が明瞭になり、また診断書の記載内容がより説得力を増していくことになるのです。
②病歴・就労状況等申立書」の個別の記載内容については、「自覚症状」「日常生活動作の具体的状況」や「行動制限」などをできるだけ詳しく記載することがポイントとなります。
例えば、「日常生活動作の具体的状況」であれば、食事、清潔保持(洗面・入浴など)、通院、外出、買い物などの「日常生活の状況」について、具体例を交えつつ、詳しく記述していくことになります。
その際には、診断書の作成依頼と同様に、数字(時間、回数、距離など)を示すことができるものは、数字を挙げて説明をする方がより良いと思います。
繰り返しとなりますが、こうした「日常生活の状況」などについて、十分な紙面を割くとともに、わかりやすく丁寧な説明をすることが大切です。
③「病歴・就労状況等申立書」は、一とおり書き上げた段階で、家族にも読んでもらうことをお勧めします。
自分では、なかなか気が付かない点も、第三者の目で見るとよくわかることがあります。まして、身近に居る家族であれば、なおのことと言えるのではないでしょうか。
書き落としたり、書き足りていない内容やわかりにくい箇所や表現などを家族からも指摘してもらい、必要に応じて内容を修正し、より良い「病歴・就労状況等申立書」を家族と一緒に作成していくのです。
以上、心臓疾患による障害年金の請求のポイントを説明させていただきました。
心臓疾患の場合も、障害年金の請求のポイントを頭に入れた上で、十分な準備の上で請求をすることが大切です。