⑦「難病」の障害年金のポイント
「難病」の障害年金のポイントについて説明をしていきます。
(1)(はじめに)
「難病」の障害年金のポイントは、以下の4つの点であると考えています。
①「障害年金の制度」や「診断書の書き方」についての事前の医師への説明。
②「日常生活の状況など」を診断書取得前に医師によく伝えること。
③ 診断書について、いつの時点の症状を書いてもらうか。
④ 診断書の訂正依頼について
以下、順を追って説明をしていきます。
(2)①「障害年金の制度」や「診断書の書き方」についての事前の医師への説明。
「難病」の場合、症例が少ないという事情もあって、医師が障害年金に関する診断書を書く機会が少なく、また障害年金の診断書を書いたことがないこともありえます。
また、医師の間に、障害年金の制度自体が、必ずしも周知されていないという事情もあります。
そのため、障害年金の診断書の依頼をしても、書き方がよくわからないため、書くべき項目が抜けていたり、記載上の不備も多く見られます。
こうした書くべき項目が抜けている診断書などでは、障害年金の受給が困難となることが想定されます。
ですので、まず医師に診断書をスムーズに書いてもらうために、障害年金の制度や診断書の各記載項目の案内を含めて、診断書の作成依頼書をわかりやすい形で作成して手渡すべきであるといえます。
医師が少しでも診断書を書きやすくするように、依頼する方の側でも、相応の配慮をすることが必要となるのです。
(3)②「日常生活の状況など」を診断書取得前に医師によく伝えること。
「難病」の場合、障害年金の診断書の種類は、定められた診断書の様式のうちの「その他の診断書」を用いて申請をすることが基本となります。(もちろん、症状によっては、「その他の診断書」以外の診断書も併せて提出することがあります。)
そして、「その他の診断書」においては、診断書の記載項目に「日常生活についての具体的な状況」に関する項目があり、その項目についての評価が審査の大きなポイントとなっています。障害年金の支給・不支給や障害等級の決定に直接かかわる要素となるのです。
このように、「日常生活についての具体的な状況」は、障害年金の審査の上では大きなポイントであるわけですが、日常の診察を通して、医師のカルテの中には事細かい内容が記載されていないこともありえます。
ですので、診断書を依頼する側の方から、診断書を書いてもらう前に、全身の倦怠感や衰弱などに代表される症状や状態を医師によく伝えることが必要です。
さらに、そうした症状・状態に起因するところの「日常生活における困難や制限の具体的な内容」、それに伴う「家族などから受けている支援・サポートの内容」をも医師に詳しく伝えておくことになります。
こうした説明を事前に医師にしておき、その伝えた内容を医師がカルテに記録しておいてくれれば、その記録したカルテの内容に基づいて診断書の作成を行うことを見通すことができます。つまり、現在の症状や実状を適切に反映した、障害年金の受給に必要十分な診断書を書いてもらうことができるのです。
(4)③診断書について、いつの時点の症状を書いてもらうか。
次に、「診断書に、いつの時点の症状を書いてもらうか。」ということについて説明します。
障害年金の診断書は、「初診日から1年6か月経過後3か月以内(障害認定日の後3か月以内)」の診断書と現在の時点の診断書を提出することが多いと思います。
このように、障害年金の診断書は、請求する側が自分で任意の時点を選んで診断書を提出できるわけではなく、診断書を提出すべき時期は、予め決まっています。
しかし、予め決まっていると言っても、その時期には「幅」があるのです。
例えば、「障害認定日の後3か月以内」といっても、3か月の幅があるのです。
そして、「難病」の場合には、短い期間のうちをとっても、治療行為の内容などの諸事情によって、全身の倦怠感や衰弱などの症状は大きく変化することがあります。
つまりは、いつの時点(何月何日)の症状を書いてもらうかによって、診断書に記載される内容(生起している症状や全身の倦怠感などの強弱、日常生活の具体的な状況の内容、入院期間中かどうかなど)が、かなり変動することとなるのです。
そのことが、まさに障害年金の審査結果に直接的に影響を及ぼすであろうことは、一般には見易いところであると考えられます。
そうであるならば、医師に障害年金の診断書を書いてもらう際には、症状の消長を踏まえ、具体的にいつの時点(何月何日)の症状を書いてもらうことが障害年金の受給という観点から見て最善なのかを考え、また医師ともよく相談すべきです。
そして、医師の了解を得て、「いつの時点の症状を書いてもらうか。」が決まった後に、診断書の具体的な記載をしてもらうことが大切です。
(5)④診断書の訂正依頼について。
最後に、「取得した診断書の訂正依頼について」説明していきます。
診断書を一度取得した後に、診断書に形式的な不備がある場合や、実際よりも診断書の内容(症状の程度・内容)が軽く記載されている場合などには、診断書の訂正の依頼をすることが必要となります。
前者の診断書の形式的な記載漏れなどの不備の場合は、年金事務所の方からも訂正の指示があるのが通常です。
後者の症状の程度・内容についても、記載されている診断書の内容をよく検討し、もし少しでも事実とことなる場合には、医師に症状などの診断書の内容に関わる訂正を依頼することが必要です。
当センターでは、これまでに、数多く「難病」での障害年金の申請代理を行ってきまましたが、「診断書の訂正の依頼」に関して、経験上いえることがあります。
それは、「難病」の場合、症状の程度などの内容の訂正を依頼する場合、ほとんどの場合、こちらの依頼する内容での訂正をしてくれる傾向があるということです。
他の傷病(精神疾患など)と比べると、上記の傾向を明らかに見て取れるのです。つまり、依頼したとおり、診断書の訂正をしてくれる場合がほとんどなのです。
というのも、症状の程度などについての訂正依頼の具体的な中身は、「全身の倦怠感や衰弱の程度」「外出の困難性」などであることが多いためであると考えています。
「全身の倦怠感や衰弱の程度」などは、「難病」の場合、医師の手元のカルテには、必ずしも断定的な記載があるとはいえないことに起因していると思います。
本人が、十分な資料を示して医師に説明をすれば、それを理解してくれる場合が他の傷病のケースよりも多いといえるのです。(既存のカルテの内容とも相矛盾しないがために、医師の側でも受け入れてくれるものと思われます。)
ただし、注意すべきは、説得的な資料の作成作業をいとわず、また口頭でも医師に十分な説明をすることが前提条件であることを念頭に置くことです。
このように、一度診断書を取得して、その診断書の記載内容が実際の傷病の程度を十分に反映していない場合は、そのままの診断書を提出するのではなく、訂正の依頼(必要なら複数回にわたる訂正の依頼)を必ず行って、最善の内容の診断書で障害年金の申請を行うことが大切です。
(6)(まとめ)
一見すると「難病」での障害年金の申請は困難であるように見えます。
そのことは、一面では確かにそのとおりですが、反面、上記のような障害年金の申請のポイントを踏まえて、十分な準備の下に申請をすれば、むしろ障害年金が支給されやすい側面があるということも、経験上言えるのです。
当センターで実際に行った「難病」での障害年金の請求において、「なかなか障害年金の受給が難しかろう。」と思われた複数のケースで、どれも無事に障害年金の支給決定の審査結果がおりています。
これも、「難病」での障害年金請求のポイントを着実に履践した成果と考えています。
最後に繰り返しとなりますが、「難病」での障害年金申請の場合には、他の傷病にも増して、ポイントを踏まえた申請を実践することが大切となります。